テーマ:古泉千樫

私の好きな近代短歌(225)

日の光あたたかければ外(と)に出でて今日は歩めりしばらくのあひだ  古泉千樫  今日はお日様が暖かいので、久しぶりに外に出て、しばらくの間歩いてきた。  体調のよい日には、娘たちと一緒に外を散歩することもあった。しかし咳をすれば、いつ喀血するか分からない病状だった。  ほがらかにをさなき吾児が笑ふなべ笑はむとすれば咳いでん…
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私の好きな近代短歌(224)

ひたごころ静かになりていねて居りおろそかにせし命なりけり  古泉千樫  一心に安静にして寝ている。思えば、これまで乱暴に扱ってきた命だなあ。  門人も増え、これからの活躍が期待された時、突然喀血した千樫は、故郷の千葉に帰って静養した。思えば、若さにまかせてずいぶん無理をした生活だった。  当時、結核の特効薬はなく、治療とい…
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私の好きな近代短歌(223)

瓶(かめ)の中に紅き牡丹の花いちりん妻がおごりの何ぞうれしき  古泉千樫  瓶にみごとな紅の牡丹が一輪活けてある。妻が思いきって高価な牡丹の花を買ってくれたのだ。何とありがたいことだ。  一九二四(大正十三)年、三九歳の時、千樫は突然血を吐いた。結核だった。寝たり起きたりの毎日が始まった。つつましい生活だったが、妻は千樫の目…
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私の好きな近代短歌(222)

茱萸(ぐみ)の葉の白くひかれる渚みち牛ひとつゐて海に向き立つ  古泉千樫  グミの葉が白く光っている渚の道に牛が一頭いて、海の方を向いて立っている。  千樫は農家の生まれで、幼い頃から牛の世話をしてきた。千樫にとって牛は、身近で親しみを持った対象だった。したがって牛を詠んだ歌が多い。  グミの葉は固く、裏が白い。風が吹くと…
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私の好きな近代短歌(221)

たたなづく稚柔乳(わかやはちち)のほのぬくみかなしきかもよみごもりぬらし  古泉千樫  重なった若くて柔らかい乳房が、かすかに温かくて愛しいことだ、身ごもったらしい。 次女を失った悲しみを抱く、若い千樫夫婦に、次の懐妊がもたらされる。  妻から妊娠を告げられた千樫は、貴重な宝物を愛でるように、妻の裸身をいとおしく抱きし…
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私の好きな近代短歌(220)

光りつつたちまち消えし流れ星あかつきの海はいまだ暗しも  古泉千樫  光りながらたちまち消えた流れ星よ。明け方の海はまだ暗いままだ。  千樫は四人の娘をもうけた。次女の条子は生まれてまもなく亡くなった。亡骸を故郷に埋葬するべく、柩を抱いて夜行の船で千葉へ帰った。明け方の海上の空に流れ星が走った。千樫には、あっけなく逝った条子…
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私の好きな近代短歌(219)

ねむの花匂ふ川びの夕あかり足音(あおと)つつましくあゆみ来(く)らしも 古泉千樫  ねむの花の匂う川辺の夕明かりのなかで待っていると、つつましい足音が聞こえてくる。やっとあなたがやって来たようだ。  激しい片思いがやっと叶って、彼女とデートをするようになる。当時のことだから村の中でデートというわけには行かない。千樫は東京に出…
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私の好きな近代短歌(218)

君が目を見まくすべなみ五月(さつき)野の光のなかに立ちなげくかも  古泉千樫  あなたを見たくてどうしようもなく、五月の野原の明るい光のなかに立って、嘆いていることだ。  まだ十代の千樫は、東京への憧れを抱きながら、故郷で一人の少女にはげしい恋心を抱いていた。「見まく」は「見ること」、「すべなみ」は「方法がないので」という、…
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私の好きな近代短歌(217)

都べにいつかも出でむ春ふかみ今日の夕日の大きく赤しも  古泉千樫  東京にいつかは出よう。春も深まり今日の夕日は大きくて赤い。  明治の田舎の青年のほとんどが、いつかは東京に出て身を立て、名を挙げ、故郷に錦を飾る夢を抱いていた。特に千樫のようなインテリ青年は、このまま田舎に埋もれてしまう人生に甘んずることはできなかった。一九…
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私の好きな近代短歌(216)

山火事の火影おぼろに宵ふけて家居かなしも妹(いも)に恋ひつつ  古泉千樫(こいずみちかし)  山火事の火がぼんやりと霞んで、夜になった。あの人のことを恋しく思いながら家にいると、悲しくなってくる。  古泉千樫は一八八六(明治十九)年、千葉県の自作農の長男に生まれ、一九二七(昭和二)年四一歳、結核で亡くなった。十九歳で「馬酔木…
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