私の好きな近代短歌(222)

茱萸(ぐみ)の葉の白くひかれる渚みち牛ひとつゐて海に向き立つ  古泉千樫

 グミの葉が白く光っている渚の道に牛が一頭いて、海の方を向いて立っている。

 千樫は農家の生まれで、幼い頃から牛の世話をしてきた。千樫にとって牛は、身近で親しみを持った対象だった。したがって牛を詠んだ歌が多い。
 グミの葉は固く、裏が白い。風が吹くとそれが白く光る。海辺の道に牛が一頭、のっそりと立って、じっと海の方を見ている。牛の絵が得意だった坂本繁二郎の油絵を見るような情景だ。
 牛は、深遠な哲学者を思わせる。大きな目は深い色に澄んで、宇宙の真理についてじっと考え込んでいるかのようだ。
 ふるさとの春の夕べのなぎさみち牛ゐて牛のにほひかなしも

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