私の好きな現代短歌(251)

引揚げ船いくつか還るそが中にもしや弟がと思うしばしば    岩間正男
 引き揚げ船がいくつか還ってきたが、その中にもしや弟が元気でいるのではないかと、度々思う。
 
一九四五(昭和二〇)年秋、南洋や大陸に派遣されていたたくさんの兵隊や民間人が、船で日本に引き揚げてきた。その船を引き揚げ船と呼んでいた。正男の弟は徴兵されて南洋の方へ派遣されていたが、まったく音信不通だった。しかし一九四七(昭和二二)年、戦死の公報がはがきで届いた。
 「二月十日比島ピナッポ山麓に戦死す」と伝えしのみの短き葉書
 おおよそのあきらめ心と若しやという愚か心がわれを待たせし
 ふと止まるわれの歩みや弟は二年前すでに比島に戦死せり

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック