私の好きな現代短歌(185)

朝さめてこの世に老いし人ひとりにれ噛むごとく夢をはかなむ    佐藤佐太郎
 朝目が覚めると、私はこの世に生きる一人の老人だ。見ていたはかない夢を反芻している。

 七十四歳の佐太郎の、老人生活の悲哀が、ありのままに詠まれていく。若い人には実感が湧かないかもしれないが、同年配になった私には、身につまされる歌だ。視力が低下し、足腰が弱くなり、歯の具合が悪くなる。
 いまわれは低き枕に夜々ねむるかかる形に馴れし老人
 眼を病むといふにあらねど見ゆるものおほよそかすみ黙す日多し
 畳ふみ部屋をあゆめば足よわき一足ごとに運ぶ身重し
 義歯重く思ふことあり年老いて健かならぬ日々を送れば
 

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