短歌随想「桑の葉」
<<
作成日時 : 2008/07/08 05:57
>>
トラックバック 0 / コメント 0
懐かしき桑の葉を見きその陰に黒き実のあり口に入れたり
九州、四国が梅雨明け宣言をしましたが、新潟県はまだまだ梅雨の真っ最中です。これからしばらくうっとうしい時期が続きます。とは言っても、どうもカラ梅雨で水不足に悩みそうですね。
近所の川の土手を散歩していたら、何か懐かしい思いがする葉っぱを見つけました。何だったかなあと思いながら、葉っぱをちぎって匂いをかぐと、ちょっと刺激のある懐かしい香りがしました。一挙に記憶が戻ってきました。葉蔭を探すと懐かしい黒ずんだ実も見つかりました。早速口に入れてみました。甘酸っぱい懐かしい味がしました。この木は桑でした。子供のころの思い出が次々とよみがえってきました。
1944年、太平洋戦争末期、落下傘の生地にするというので、蚕を飼うことが奨励されていました。私たち国民学校生徒も、学校から勧められて、蚕を飼いました。桑畑はあちこちにありました。私は、兄と一緒に数匹の蚕をペットのようにして飼いました。
毎朝、近所の桑畑から、無断で数枚の桑の葉を採ってきて、朝露を拭って蚕に食べさせました。濡れた葉を食べさせると、蚕は死ぬと教えられていました。小さい毛虫のような蚕が、どんどん大きくなってくるのはとても可愛いことでした。中指ほどの大きさに育って体が透明になってくると、新聞紙をパイプのように丸めたものを置いてやります。蚕はその中に潜っていきます。そして繭を作り始めます。翌朝起きてみると、すっかり繭が出来上がっています。それを学校へ持って行って、先生に渡すのでした。私の育てた繭が、航空兵の落下傘や、特攻隊員の白いマフラーになったかどうかは分かりません。今は、ナイロンに押されて、絹の需要が減り、桑畑もなくなってしまいました。野生になった桑がかろうじて生き残っているのは、かわいそうに思いました。
|